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海外の目線から見た本当のスーパーグローバル大学

海外出身の教員・職員の声を通して
世界におけるスーパーグローバル大学の立ち位置を明らかにします。

SGUのグローバル環境

  • 数学は世界共通でも教育は地域限定

    GUEST Martin

    早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 教授
    イギリス出身
    GUEST Martin

    私は人生最初の25年を英国で過ごし、教育を受けた後、最初は米国で15年間、次に日本で25年間、教員として働いてきました。大学教員人生の終わりを迎えようとしている今、日米の大学院制度の違いを論じるのなら、おそらく私が適任ではないかと思います。
    数学は万国共通ですが、教育制度は国ごとに大きく異なります。大学院教育を評価する場合は、教育制度が歴史の産物であることを念頭に置かなければなりません。たとえばドイツやフランスは、その伝統とヨーロッパの中心的存在としての立場から、国は小さくても盤石な制度を備えています。これに対して中国はあれほどの大国であるにもかかわらず、いまだにその後塵を拝しているのが現状です。
    日米の大学院課程の大きな違いはどこにあるのでしょうか。日本の大学の場合、修士課程の人気は高いにもかかわらず、博士課程に進学する学生は一握りです。これに対して米国の場合は大学院生のほとんどが博士学生です。また日本の博士課程修了者はアカデミアに職を得るのが一般的ですが、米国の場合はアカデミアだけでなく産業界/企業も主な就職先となっています。さらにこの数十年、米国の博士課程は留学生(および外国人教員)が大多数を占めていますが、この点も日本と対照的です。
    (アカデミア外の)政策立案者はこうした違いを生み出す具体的な理由に気づいていないのではないでしょうか。日本の高校生は大学入学前から高等数学を学び、難しい入学試験を突破した後、大学1年で線形代数や解析学などを履修します。一方米国の場合、線形代数や解析学を学ぶのは学部2年次または3年次になってからです。ところが皮肉にも、こうした学部教育の遅れが米国大学院の強みに繋がっているのです。米国の大学では、博士学生を対象とした奨学金や学費免除制度が充実しており、博士学生は有給の教員として後輩の指導に当たることができます。日本の博士学生にはそれが許されておらず、それどころか自分の生活費を稼ぎつつ学費を支払わなくてはなりません。
    給与制度に関しては、多くの場合米国に軍配があがりますが、学生や教員への期待など多くの面で厳然たる違いがあります。しかしながら、それは主に文化の違いによるものです。あまり知られていないのは、大学院のコース数は日本の方が多いということです。修士学生の人数が多いことがその理由です。こうした違いを学び、それが「アウトプット」(博士号授与数など)にどう影響しているのかを知ることが大切です。

    早稲田大学
  • グローバルな視点でローカルな問題を考える:秋田とサバ州の協働学習プログラム

    Tini Maizura Mohtar

    マレーシア国立サバ大学 経営経済会計学部 観光経営学 上級講師
    (国際教養大学協定校)
    Tini Maizura Mohtar

    国際教養大学(AIU)と マレーシア国立サバ大学(UMS)の協働課題解決型学習(PBL)プログラム「グリーン・エコノミーへの多角的アプローチ」では、豊かな多様性と文化を誇るボルネオ島で両校の学生が基礎的な研究プロジェクトを実施し、グリーン・エコノミーについて多面的に学習しました。このプログラムは学生たちの国際的な学びをサポートするもので、観光学を専攻するUMS生は、AIU生との交流を通して旅行者の視点を学ぶという貴重な機会を得るとともに、貴重な自然地域で行われる開発の在り方について理解を深めました。AIU生との交流は、ローカルな問題をグローバルな視点で考える力を養う機会であり、観光学専攻の学生にとって得難い体験となりました。さらに学生たちは国際チームの一員として積極的に活動し、効率よくフィールドワークを進めて、2週間以内にその成果をレポートやグループ発表の形でしっかりと発信しました。私が特に素晴らしいと感じたのは、学生たちが国際交流を楽しみつつ、期日までにきちんと課題を仕上げたことです。
    ボルネオの環境はAIU生にとっても刺激的な学習の場となったことと思いますが、同時にAIU生の視点により、私たちは現地の自然や文化資源の価値に改めて気づかされました。またAIUチームから人間と自然の共存を目指す国際的な取組、「里山イニシアティブ」を紹介してもらい、このイニシアティブから生まれた指標を使って、サバの現地コミュニティや景観の素晴らしさ、そしてそこに内在する問題への理解を深めました。

    国際教養大学

SGUの学生

  • 自国を離れ、新たな発見に出会う毎日を

    Philip SEATON

    東京外国語大学 大学院国際日本学研究院 教授
    イギリス出身
    Philip SEATON

    教室で学べる事も数多くありますが、学生には可能な限り教室の外で学ぶ機会を作ってほしいです。近年、インターネットで調べられる物事が増えるとともに、学生の「足を運んで学ぶ」という精神が薄くなっているように感じます。しかし、体感的に学ぶことは大切です。キャンパス内で学ぶならば、最適な場所は図書館です。本棚を見ながら、人間が積み重ねてきた知識を実感することができます。キャンパス外であれば、学びの選択肢はインターンシップやアルバイトなど豊富ですが、最も体験してほしいのは海外留学です。朝から晩まで慣れていない環境に身を置くため、毎時間・毎分が学ぶ機会となります。私は留学生・教員として日本で24年以上生活しています。それでも、見たことのない漢字や新たな習慣を頻繁に発見するので、今も「日本」という教室で学んでいる気持ちで毎日を過ごしています。留学は外国語学習者に必要だと捉えられることが多いですが、文系・理系を問わずに専門的な知識とライフスキルを学ぶ機会でもあるのです。
    自分の留学体験を踏まえて、学生たちにも強く留学を勧めています。自国の外から自分の文化、人生、価値観を振り返ることは、必ず貴重な経験となります。コロナ禍において人の国際移動が難しくなりましたが、スーパーグローバル大学の重要なミッションとして、留学を勧め続けています。多くのプログラムは交換留学という形式をとっているので、インバウンドもアウトバウンドも自由に留学を行える日が早く戻るように祈っています。

    東京外国語大学
  • グローバル時代におけるトランスナショナルな法学教育の範囲と目的を巡る考察

    MOUSOURAKIS George

    広島大学 法学部 人間社会科学研究科
    ニュージーランド・オーストラリア出身
    MOUSOURAKIS George

    私は25年近くにわたり、オークランド大学、クイーンズランド大学、新潟大学、立命館大学、広島大学など、アジア太平洋地域や日本の大学で法学を教えてきました。これまでに多くの著作物の中で指摘してきたことですが、国家間の結び付きが強まり、法制度の相互関係が緊密化する中、法律家の仕事が国内だけで完結していた時代はもはや過去のものとなっています。
    法律業務の国際化の流れを受けて、ロースクールではトランスナショナルな法教育が強化され、新たな留学制度やジョイントディグリー制度が導入されています。またオセアニア地域では、ほとんどのロースクールが1年次のカリキュラムに比較法学のコースを組み込んでいます。法学のカリキュラムの核となる科目は、法律の比較分析により重点を置き、グローバル化ならびに国際主体や国際機構が法の運用にどのような影響を及ぼすかという点をさらに深く学ぶ内容となっています。
    加えて、多様な法文化や法制度に触れる機会を学生に提供するために、トランスナショナルな学習環境を整備しているロースクールが増加しています。交通の発達と技術の進歩により、今や法学の授業もモバイル環境で受講できるようになり、留学したり、テレビ会議などの通信システムを使ってオンラインで学んだりすることが可能になりました。また法学の教師にも、できる限り外国の法制度の専門家と共同授業を行うことが推奨されています。協同授業は、学生と教員の双方にとって学びを深める機会であり、それ自体が貴重なトランスナショナル教育の実践例です。トランスナショナルな法学の学習に欠かせないのは、多言語で話し、執筆し、研究する能力です。
    今では広島大学も含め国内外の多くの大学がこの認識を持っており、外国語の学習や経験を豊富に積んだロースクールの学生(特に大学院生)は貴重な存在となっています。トランスナショナルな法学教育は、世界が相互依存を深める中で文化の多様性を認め、尊重することのできる新世代の法律家や公務員、専門家を育成する上で大切な役割を果たします。学生が例外主義や偏狭な郷土愛を排し、寛容の心と国際協力の精神を育むための最も効果的なツールの一つなのです。

    広島大学

SGUのカリキュラム

  • 学生寮は学びの場、交流の場、成長の場。

    NGUYEN PHUOC QUY TUONG

    上智大学学生局学生センター
    ベトナム出身
    NGUYEN PHUOC QUY TUONG

    近年、日本の大学では従来の授業内での学びとともに様々な課外教育プログラムが展開されています。そうした中、多様性に満ちた環境で日々の生活を通して学生が良い経験を得られるよう、国際寮の設立が相次ぎ、日本の大学生にとって国際性・多様性を学べる貴重な場となっています。
    私たち上智大学では、この10年間で直営の国際寮を二つ開寮しましたが、単なる「住居」としての機能だけでなく、「教育寮」として位置付けています。寮生全員が多様性の中での共同生活を通じて人間的成長を果たすために、基本的な生活コミュニティとしてリビンググループを形成し、各グループにはリビンググループリーダー(LGL)を任命しています。LGLは寮生代表として、新寮生の入寮サポートをはじめ、寮内で様々な学習会や交流イベントの企画等、寮生と一緒に寮文化の醸成に貢献しています。リーダー活動を通して、自身がチームビルディングやプロジェクトマネジメントなど、リーダーとしての多様なスキルを習得していきます。こういった環境で寮生同士が多面的に学び合い、成長する姿が見られています。また、卒寮生は国内外で事業を展開している企業へ就職しており、国際寮を含めて多様な価値観や考え方を持つ仲間と一緒に過ごした学生生活が、現在仕事の場でも役に立っているとの声もよく聞かれます。
    現在、私はこういったリーダー活動や寮内の行事などを担当しており、リーダー達の寮運営活動にアドバイスを行ったり、リーダーとしてのスキルを身につける研修をデザインしたりする等、学生局職員として相談役、ファシリテーターなどの新たな役割を通じて日々学ばせていただいています。また、様々なバックグラウンドを持つ寮生の対応が日々仕事の醍醐味であると同時にチャレンジングであり、これからも対応力を高められるように、寮生達のバックグラウンドをさらに理解する等に努め、寮生がより良い学びにつながるよう支援していきたいです。

    上智大学