• TOP >
  • NEWS >
  • 【報告】11月21日(火)「異文化を学び自文化を学ぶ」プロジェクト第3回講演会「世界からみた宮沢賢治絵本の魅力」を開催しました。

東洋大学

【報告】11月21日(火)「異文化を学び自文化を学ぶ」プロジェクト第3回講演会「世界からみた宮沢賢治絵本の魅力」を開催しました。

2017.12.19

 

 

2017年11月21日(火)4限目、白山キャンパス6号館6B14教室にて、文学部国際文化コミュニケーション学科「異文化を学び自文化を学ぶ」プロジェクト第3回講演会を開催し、「世界からみた宮沢賢治絵本の魅力」という題目で、オーストラリア・ウーロンゴン大学Dr. Helen Kilpatrickにご講演いただきました。

日本の児童文学界では有名な宮沢賢治ですが、実は海外でも人気があり、多くの絵本作家が絵本化し、各国で翻訳もされています。その宮沢賢治作品の絵に注目して比較研究を行ったのがキルパトリック先生で、その成果を大著にまとめて出版されています。今回、オーストラリアから本学の共同授業のために来日、貴重な研究成果を豊富な画像を用いてわかりやすくお話しくださいました

f1f2

f0

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘレン・キルパトリック先生は近代日本児童文学を専門とする研究者。オーストラリアのウーロンゴン大学准教授として日本語や日本文化を担当されています。講演の冒頭に、先生が教鞭をとられているウーロンゴン大学について簡単にご紹介いただきました。シドニーから電車や車で1時間程度の海辺の街です。真っ青なオーストリアの海岸の写真はため息が出るほど美しく、オーストラリア留学への夢を誘います。

今回のご講演のテーマは、先生の一番のご専門の「宮沢賢治の絵本」でお願いしました。まず、なぜ、先生が宮沢賢治の研究をすることになったのか。修士課程のときの指導教授が、日本語があまり得意でなかったため、絵本の研究を勧められたとか。そこで日本文学の絵本化作品を探したところ、オーストラリアで出版されている英訳絵本としては宮沢賢治が一番多かった。宮沢賢治を調べていくうちに、賢治の魅力にはまっていった。特に、オーストラリア在住の日本人画家Junko Morimotoに出会い、彼女の4冊の賢治絵本の美しさに感動し、賢治絵本の比較研究を発展させ、学位論文にまとめた。その成果は、Miyazawa Kenji and His Illustrators(未訳、2013、右図は表紙)として刊行されています

オーストラリアで日本語や日本文化を教える際にも、賢治はとてもユースフルである。言語はシンプルなのに、内容は深いく、読み込んでいくと多様な解釈が可能である。表面的なユーモアの裏に、人生に対する深い問いまで含んでいる。日本文学を専攻したくても、いきなり夏目漱石や谷崎潤一郎はむずかしいので、その点、宮沢賢治は最適だというご指摘でした。

賢治文学の特徴を語るのに、2つの代表作品『注文の多い料理店」と『どんぐりと山猫』を例に挙げられました。これらは、仏教やアニミズム思想を、ユーモアとアイロニーに包んで表現した日本らしい作品でもあります。こういった深い思想性が、多くの画家たちの想像力を刺激し、たくさんの絵本が出されているゆえんです。

先生が集められた賢治絵本の数々。海外での出版や、日本の現代作家のものなどたくさん提示してくださったが、そのバリエーションは驚くほど。『どんぐりと山猫』でも猫がでてこない抽象画ばかりの絵本など、読者の想像力をかきたてる新鮮なものでした。

さらに、賢治絵本における少女像というテーマでのイラストの比較という大変興味深い視点が提示されました。『マリヴロンと少女』や『双子の星』のロマンティックな美少女像、『銀河鉄道の夜』の中性的な少年たちの絵をなどを提示し、萩尾望都の漫画との類似性も指摘されました。

ヘレン先生の講義は、表情豊かで躍動感あふれるもので、記録係のカメラマンがピントを合わせるのに苦労したくらいです。英語ネイティブの方のプレゼンテーション力を目の当たりにしました。

zu

h6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

60分以上英語を聞き続けてきたところで「眠くならないようにクイズを作ってきました」とほほえまれながら、賢治絵本のいろいろな場面の絵が投影されました。「どの作品のものでしょう?」あちらこちから声があがります。『やまなし』『虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)』『双子の星』『銀河鉄道の夜』、美しいイラストに目を奪われながら、あたったり、はずれたり、一喜一憂した楽しい時間となりました。

最後の質疑応答では「絵本以外に先生が好きな日本文化を教えてください」という質問が出て、「能や歌舞伎などいろいろな伝統文化に興味があります。この週末も、歌舞伎『ワンピース』を見てきました。スペクタクルが素晴らしかった。みなさんも、ぜったい見るべきです」本当に日本文化を愛し堪能している姿がうかがえました。

今回は「英語圏文学文化と日本」の授業の枠を使ったので、英語をメインとする専攻以外の学生も多かったのですが、Tgポイントも念頭に、思い切って通訳なしの英語講演としました。しかし、日本の大学でも教鞭をとられた経験のあるキルパトリック先生が日本人学生の英語力に配慮して、内容の要旨をスライドで表示しながら、シンプルな英語を使いゆっくり話し、キーワードは日本語で補足するなど工夫をこらしてくださったので、大変聞きやすいものでした。学生アンケートでは、「英語が苦手だけど思っていた以上によく聞き取れたので嬉しかった」といった声も多く寄せられ、グローバル教育の観点から大変いい経験となりました。聴講者は約160名、熱気にあふれた講演会となりました。

受講生のアンケートでは、「日本人でもむずかしい宮沢賢治を深く理解していることに感動した」「宮沢賢治が世界で知られているのがすごいと思った」「挿絵によって作品のイメージが変わることに驚いた」など、知っていることを外からの視点でみるおもしろさに気づいた声が多かったです。英語での講義はあまり経験がないので、貴重な体験として楽しんでいた人が多かったようですので、今後もなるべくそういった機会を増やしていきたいと思います。

 

f5

 

Dr. Helen Kilpatrickプロフィール オーストラリア、ウーロンゴン大学(University of Wollongon) 准教授。専門は日本文学、特に宮沢賢治と安房直子。単著に『宮沢賢治とその挿絵』(未訳、2013)論文"Envisioning the shôjo [girl] Aesthetic in Miyazawa Kenji's "The Twin Stars" and "Night of the Milky Way Railway' (2012)で、オーストラリアにおける優れた日本研究に与えられる井上靖賞を受賞(2013)。日本語論文も含め、その他論文多数。オーストラリア内の複数の大学で、日本語、日本文化、日本文学、英文学を教える。来日して、岡山県のノートルダム清心女子大学でも教鞭をとった経験もある。