米国西海岸訪問(協定校訪問・産官学拠点訪問・キャリア支援交流)
2019.03.20
1月28日~2月2日、教育推進機構の新城雅子客員教授が、米国サンフランシスコ・ベイエリアの産学官の組織を訪問し、本学修了生・在学生(留学生、日本人学生)のグローバルでの活躍の場を開拓する目的で、本学の紹介、訪問先との情報・意見交換を行いました。
今回の訪問実施の背景
本学には、2018年5月1日現在、252名の留学生(全学生数の24%)が在籍しています。多くの留学生が本学で修士または博士学位取得後のキャリアとして、日本での就職、ポスドク勤務を希望しているのと同様に、欧米での就職、ポスドク勤務を希望しています。既に本学ではサンフランシスコ地域にある協定校UC Davisで、語学研修、研究インターンシップを実施しており、これらを経験した留学生、日本人学生に本地域で研究活動を実施することへの関心が高まっています。
【サンフランシスコ・ベイエリア産官学拠点訪問】
官:
<ジェトロサンフランシスコ事務所>
1月28日午前、新城客員教授は大阪大学北米拠点 拠点長 長谷川和彦教授とともに、サンフランシスコ市内にあるジェトロ事務所を訪問しました。当日は、中沢則夫事務所長ご同席の下、石橋所員、古賀所員から「日本企業の研究開発動向を含めたシリコンバレーの一般経済事情」について紹介いただき、参加者全員で大変活発な情報・意見交換を行いました。日本企業進出がこの2年も順調に増加している状況下での課題は、賃金と住居費の高騰であり、日本企業もオフィスの維持に苦労する状況で、大学院修了生のインターンシップ実施においても、この課題への対応が必要です。
![]() ジェトロサンフランシスコ事務所 訪問 |
![]() JGI Director Dr. Nigel Mouncey |
<米国 政府系研究所 DOE JGI>
1月28日午後、新城客員教授は、サンフランシスコ市郊外Walnut CreekのDOE JGI (Department of Energy Joint Genome Institute;所員約300名、今年春からUC Berkeley構内に移転)を訪問しました。米国エネルギー省管轄下のゲノム情報を活用した多面的なプロジェクトを実施され、日本の研究機関との共同研究も多いそうです。本学の紹介および学生のベイエリア勤務の要望を伝えました。JGI所長Mouncey博士によると現在日本人研究者も複数名勤務している国際的な研究所で、今後も世界各国からの留学生や日本人研究者の活躍の場として魅力的な研究環境であると考えられます。
学:
<大阪大学北米拠点>
1月28日午後、新城客員教授は大阪大学北米拠点を訪問しました。サンフランシスコ市内の中心地Montgomeryに拠点オフィスを構え、(1) 遠隔講義:国際教養科目として現地の研究者が実施; (2)留学生支援:北米・日本双方向の留学支援 (3)北米同窓会支援を主に実施されています。長谷川和彦拠点長は、またJUNBA(Japanese University network in the Bay Area)の理事も兼務されています。当日は日本からの学生の支援状況(UC Davis研修後の企業訪問プログラム実施など)、ベイエリアのベンチャー情報、出張中の移動方法や宿泊地へのアドバイスも含め、細やかな助言をいただきました。また、29日30日のシリコンバレー方面への企業・大学訪問に同行いただき、訪問先での情報・意見交換に加わっていただきました。
![]() 大阪大学北米拠点訪問 長谷川拠点長との面談 |
![]() Stanford大学 西村先生のレクチャー |
<Stanford>
1月29日午後、新城客員教授はStanford大学医学部を訪問し、西村俊彦先生(Director, Drug Device Development and Regulatory Science)から"Drug Development at Stanford How to recruit the Best Post Doc"と題したレクチャー(写真参照)を受けました。主要ジャーナルに募集を出すと1ポジションあたり200人程度の応募があり、書類で10名に絞り、Zoomで10分プレゼンを実施後、3名に絞り、、、というステップを経る西村先生の選考プロセスを伺いました。ポスドク選考は、予想通り非常に厳しいようです。「優秀さに加え、チームプレーできる」ことが重要であるとのこと。次に、西村先生のご研究(ヒト化マウス)について伺い、今後もポスドク採用を継続されるとの情報が得られました。
<UC Davis>
1月31日午前、新城客員教授は語学研修受講生が集まるInternational Centerに在米30年の藤田斉之先生を訪ねました。藤田先生は、米国の大学に入学以来、英語教授法を学ばれ、UC Davis大学にて日本の大学とパートナーシップを組み、独自の英語教育を実施されてきました。20年前、本学の真木壽二教授からの相談を受け、科学技術のための英語コースを開始、8年前から大阪大学工学研究科も同様のプログラムを開始されています。その4週間のプログラムは、Critical Thinking とPresentationの2点集中で行われています。現在は、更に日本の大学数校が加わったコースとなっているとのことです。ここで生きた英語教育を受講して帰国した学生の中には、この地でインターンシップ経験やポスドク研究を行いたいという希望を持つ学生もおり、藤田先生開発の英語教育で得られた自信が実際のキャリア選択にもポジティブに働いているようです。
同日午後から、新城客員教授は学内のInternational and Career Centerご所属のJanice Morand博士を訪問しました。NAISTでの留学生向けキャリア支援と同様の幅広いプログラム(自己分析、履歴書の書き方、面接模擬練習、学内合同企業説明会、企業個別説明会・面談など)を実施されており、理系の大学院生の場合、ほぼ学生時代から就職活動を始め、修了と同時に就職する割合が高いという状況から、日本の就活状況と類似しているようです。今後も両校で情報・意見交換を継続することとしました。
![]() UC Davis 藤田斉之先生との面談 |
![]() International and Career Center Dr. Janice Morandとの面談 |
<UC Berkeley>
2月2日、新城客員教授はUC Berkeley David Brower Theaterで開催されたJSPS主催の北米日本人研究者交流会に参加しました。JSPSサンフランシスコセンター長 田宮徹先生、サンフランシスコ・ベイエリア大学間連携ネットワーク(Japanese University Network in the Bay Area: JUNBA)副代表 大阪大学長谷川教授、早稲田サンフランシスコ拠点長會沢洋一先生、北米在住日本人研究者ら合計約80名参加の交流会では、情報・意見・名刺交換も盛んに行われ、新たなネットワークが形成されました。また留学希望の学生に有用なUJA(United Japanese researchers Around the world)のウェブコンテンツ(「留学体験記」や世界中の45ものコミュニティー情報)の紹介がありました。
産:
<シリコンバレー地域ベンチャー企業>
1月29日、30日、新城客員教授はシリコンバレー地域の4つの現地進出日本企業を訪問しました。
Rakuten USA Inc. (楽天米国支社、シリコンバレーSan Mateoの一等地に位置する): Rakuten三木谷社長室室長(木村氏・富永氏、お二人とも多彩なキャリアパスを経ての楽天入社)と面談後、Rakutenアメリカ本社を視察しました。面談では、全米で依然として最大のビジネス(ディール)を生むシリコンバレー地域のベンチャー動向概要説明およびRakuten Nestという貸し事務所のご紹介をいただきました。建物内には、買収された複数のユニットが同じフロアに境目なく存在し、アンメットニーズを満たす異分野のアイデアの融合が促進されるような環境であることが実感されます。現在、現地大学に語学研修目的で日本から渡米している学生の企業訪問についてもご検討されており、今後、インターンシップ実施も可能とのことでした。
VALUENEX社(日本に本社、シリコンバレーPalo Altoに支社):「世界に氾濫する情報から「智」を創造する」理念を持たれるグローバル企業です。ビッグデータ(特許情報や論文情報など)のマイニングとその可視化で、次のビジネスの価値を見つける支援をコンサルティングとツール販売事業により展開されている実例をご紹介いただきました。シリコンバレーに進出する日本企業の次の一手の探索を支援されています。現地 COOのJiyong Choiさんのご経歴が魅力的でした。(日本の広島と東京で生命科学分野の勉学をされ、その後、グローバル銀行勤務、MBA取得を経て、現職。Choiさんのキャリアパスは、学生が異分野に挑戦することを後押ししているかのようです。)
Sun Bridge社(日本に本社、シリコンバレー Palo Alto地域に支社)は、名刺データ管理と活用ビジネスを進行中とのことです。昨年秋から日本の理系大学院生3名(上述のUC Davis校で英語コースを受講)が、授業・研究とバランスを取りながら、インターンシップを続行中とのことです。
Takeoff Point社 (シリコンバレー San Mateo地区にあるソニーのスタートアップ企業):3つの機能(コンサル、販売会社、人材育成プログラム)で事業展開されています。米国に研修に来た学生の会社見学やパートナー企業の人材育成研修も行われています。
上記3社とは、本学紹介後、将来、日本、ベイエリアでのインターンシップの可能性について情報・意見交換を行いました。
![]() Rakuten USA 右から富永様、木村様との面談 |
![]() Novozymes Inc. Yaver所長との面談 |
<Novozymes Inc.>
1月31日に、新城客員教授はUC Davisから徒歩圏にあるNovozymesの研究所(11か国の出身社員からなるグローバル組織)を訪問しました。所長であるDr. Debbie Yaverと面談し、本学の紹介後、Novozymes及び全世界の研究所(本国のデンマーク、米国、日本)の研究活動の紹介及び研究員の採用動向について伺いました。本研究所の採用は隣接するUC Davisからが一番多く、また全体の1/3が博士、1/6が修士という構成だとのこと。国内学生のサマーインターンシップは非常に盛んで、本学の日本人学生海外インターンシップの将来実施についても意見交換しました。
今回の新城客員教授の米国サンフランシスコ・ベイエリアの訪問をきっかけに、本学がグローバルリーダー人材供給に貢献する海外企業でのインターンシップの機会拡大、および本学キャリア支援室での海外組織(産業界、アカデミア)の求人情報の提供を含む本学の日本人学生、留学生のさらなる海外での活躍支援の拡大に繋げることが期待されます。