
構想の概要
ICUは、日本初のリベラルアーツ大学です。1953年の開学以来「国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資すること」を目的としています。また、「国際」を冠する大学であるICUは、日本語と英語によるバイリンガル教育を60年あまり前から実施するなど、日本社会の国際化を牽引する大学として、これまで先進的な取組を行ってきました。これまでの取組を礎として、今後は、スーパーグローバル大学創成事業の中で、21世紀の世界にふさわしい形で教育理念を具現化することを目指します。「教育改革」、「教育力向上」、「更なる国際化」を3つの柱として、グローバルな対話に必要な語学力を備え、語るべき内容をもち、相手に信頼してもらえるような人格の誠実さを総合的に備えた人物を育てる、「グローバル・リベラルアーツ・モデル」を築き、示すことを掲げています。
「教育改革」世界に開かれた学生選抜制度の構築
ICUは、日本の教育制度で学んだ人を4月に、海外の教育制度で学んだ人を9月に受け入れてきました。これは、開学後間もなく始まった先進的な制度です。しかし、グローバル化によって学生の多様化も進み、ICUでも、様々な国籍や同じ国籍でも異なる教育背景や言語背景を持つ学生が共に学ぶようになってきました。例えば、幼少期を長く海外で過ごしたため、日本の高校を卒業しても、大学レベルの日本語で学ぶには力が十分ではない学生や、外国籍でも英語が母語ではなく、英語の修得が十分でない学生など、一人ひとりの状況は様々です。そこで本学は、学生の言語環境や教育背景に合わせて、4月と9月のどちらでも入学できるような選抜制度を設けます。それが、2017年度から実施される「9月入学国際学生入学試験」、2018年度から実施される「4月入学国際学生入学試験」と「4月入学書類選考」です。
入学機会の複数化は、その後の学修課程にも大きな変化をもたらします。これまでは、4月入学の学生には徹底した英語教育を、9月入学の学生には徹底した日本語教育を行ってきましたが、新しい制度では、4月、9月ともに日英の語学プログラムを充実させ、学生の習熟度に合わせた多彩な授業を開講します。その結果、学生は専門科目を、日英どちらの言語でも、今まで以上により深く学ぶことができるようになります。本学では現在も、専門科目を日英別々のコースに分けていません。英語だけで卒業できるプログラムも設けません。日本人と外国人が別々に学ぶのではなく、入学者全員が、どちらの言語でも高度な学問的ディスカッションに参加できるようになってほしいからです。同一の授業の中で、日英両語が自由に交わされ、異なる背景に育った者との出会いが起きることで、自他に対する批判的思考に目覚める。それが、バイリンガリズムによる本学の「グローバル・リベラルアーツ」です。
「教育力向上」学生と教員の統合的な支援体制の構築
本構想においては、学生と教員の支援を統合的に行える体制をつくるため、2015年4月「学修・教育センター」を設置しました。このセンターは、これまで学内のさまざまな部署が担ってきた教育支援の機能を集約し、学生と教員の双方を一元的に支援する組織です。日本人学生、帰国生、英語を母語とする学生、日英以外を母語とする学生など、多様な言語背景をもつ学生に対応するためには、カリキュラムを充実させるだけでは不十分です。授業時間外に一人ひとりの学修を支える大学全体での仕組みが必要になります。学修・教育センターでは、学修目標達成のためのアカデミックプランニング(学修計画の立案)支援を行い、学部生・大学院生の隔てなく個々の言語状況に応じた論文執筆指導を実施します。また、学生だけでなく、教員の支援も行います。ファカルティディベロップメントを含む教員育成、ICT(Information and Communication Technology)を活用した授業運営などについてもきめ細かく支援します。新任教員はそこで本学の教育制度を組織的に学び、ベテラン教員もまた新たな授業形態を模索できます。これらがすべて多様な学生を迎える本学全体の教育力を向上させます。それを統合的に行うのが学修・教育センターです。
「更なる国際化」グローバル・リベラルアーツ・モデルの構築
本学は世界の他大学と協働し、世界水準のリベラルアーツ教育「グローバル・リベラルアーツ」のモデルを構築します。そのため、全米第4位(2016年)リベラル アーツカレッジ・ミドルベリー大学および世界16カ国の約30校のリベラルアーツ大学の連盟「Global Liberal Arts Alliance(GLAA)」との協働を進めます。
- ミドルベリー大学との協働
リベラルアーツカレッジの名門、ミドルベリー大学の大学院で、アメリカ・カリフォルニア州に位置するミドルベリー国際大学院モントレー校(MIIS, Middlebury Institute of International Studies at Monterey)と、学士修士をおよそ5年で取得するプログラムを設けます。これはミドルベリー大学とICUとの交換留学協定に基づく留学プログラムで、本学の学部開講科目が、同大学院の出願要件の一部として認められることにより、実現したものです。2015年度に、MIISの博士前期課程でTESOL(英語教授法)又はTFL(外国語教授法)を学べるAccelerated Entry Programが始まりました。さらに2017年度には、通訳・翻訳および国際政策・開発の分野でも学生の募集を開始しました。 - GLAAとの協働
GLAAはアメリカのリベラルアーツをモデルとして、加盟校全体で共通の枠組みを作りながら、協働して教育プログラムを実施しています。2015年3月、本学は日本で唯一、アジアで2大学目のGLAA 加盟大学となりました。このアライアンスでは、例えばGlobal Course Connectionが行われています。これは、GLAAの加盟校同士でコースを「コネクト」する取組です。共通のシラバス(授業の内容を示した計画書)で同じ図書を使ったり、共通の課題に取り組んだりして、レクチャーや学生同士のディスカッションをテレビ会議システムでつないで授業を行います。こうした共同プログラムを随時展開していきます。
〈 これまでの実績 〉